![]()
| 91年9月。 広東語のクラスは本当に楽しいものだった。先生も将来作成予定のオリジナル教科書のパイロット版の試し教えをしている様子だったし、生徒のほうも広東語についてはほぼ同じレベルから一斉に学び始めたので、実力にそれほど差がなく皆気兼ねなく学んでいけた。昼休みになると、発音練習を兼ねて習ったばかりの四字熟語を食堂や宿舎の中国人職員に大声で聞かせては、「通じた!」と喜んだ。勉強している、という感覚が全くなく、まるで子どもが覚えたての言葉を繰り返し唱えているようなものだった。 そうこうしているうちに月末になり、恒例の秋の宿泊遠足となった。春は広東省と湖南省の境に近い韶関に行ったが、今回の秋遠足は広西チワン族自治区に近い肇慶に行くことになった。ここは七星岩風景区を中心とした風光明媚な観光地で、広州や香港から船で行くこともできる。この時期は国慶節の直前に当たり、中国人らは数日休暇になるが、直接関係のない留学生には遠足旅行が企画されるのだ。参加は自由で、単独旅行する者や宿舎で勉強に励む者もいるが、今回は40人ほどの留学生が参加することになった。半数以上が日本人だろうか。大型バスに乗って 約5時間ほどの行程。途中、ファンタオレンジに味が酷似した「健力宝」の工場の前を通った。この工場は三水市にあり、正面に特大の「健力宝」の缶がディスプレイされている。改革開放経済下での成功企業モデルとして取り上げられることも多い。肇慶市内を抜けて風景区に入るとホテルに到着した。しばし散策してから自由時間となった。中山大学に来て1ヶ月のS君は、始めたばかりのギターを早速練習し出した。一日でも空けると腕が鈍る、ということでわざわざ広州から持ち込んでいたのだった。 皆遊びに来ていたので、練習に励むというやや場違いなことをするのはもちろんS君ただ一人。でも僕もヤマトさんも、そんなS君を微笑ましく見ていた。 翌日は快晴。桂林の水墨画の世界を彷彿とさせるこんもりした山が周りを取り囲み、池には蓮の花が浮かんでいる。小高い山を見定めると、皆で登り始めた。頂上から眺める七星岩の景色は素晴らしく、秋の清々しい空気と一緒にさっぱりした気分でホテルに戻る。こうして最初の一ヶ月は新しい同学たちとの交流も深めながら、楽しく過ぎていったのだった。 |